








高度成長期の1970年代、津軽半島に暮らす人々や風景を撮影した浜昇は、約50年の時を経て2020年代に再び津軽を訪れます。そこで浜が目にしたのは、およそ半世紀の間に津軽野に起こった目まぐるしい時代の変化の跡でした。本書は、廃屋の目立つ現在の津軽の風景を皮切りに、70年代の津軽野で撮影された、土と海と死者たちと共に暮らす人々、半島に広がる峻厳な風景、そして短い夏のひとときに行われる夏祭りの光景を記録した写真、全178点で構成されています。
浜昇|Hama Noboru
写真家。1946年、東京生まれ。1975年、ワークショップ東松照明教室に参加。個展・グループ展多数。写真集に、バブル景気に沸く1989年前後3年に地上げ等で虫食い状態となった東京の「空地」を記録した写真953点を収めた『VACANT LAND 1989』(photographers’ gallery、2007年)、70–90年代の沖縄を記録した『沖縄という名』(ソリレス書店、2017年)、1989年昭和天皇国葬当日とその前後の東京を記録した『斯ク、昭和ハ去レリ』(ソリレス書店、2019年)などがある。2007年に第20回写真の会賞、2017年に「さがみはら写真賞」を受賞。
プレスリリースより転載
〈写真集〉
浜昇『津軽野』
B5変型判/上製/モノクロ・カラー/200頁
寄稿:高橋しげみ(青森県立美術館学芸員)
造本:須山悠里
発行:Kula Books
発売:photographers’ gallery
定価:6,300円+税
ISBN 978-4-907865-39-9
2025年7月5日発売
◆photographers’ galleryのウェブショップで販売中
https://pg-web.net/shop/pg-kula/tsugaruno/
土地から引き離された多くの人々、打ち捨てられた数々の土地を見つめてきた浜の目に、津軽半島は広大な空地になろうとしているように映ったのではないか。
「空地」を真にそう呼ぶ資格があるのは、空地以前のその場所を知る者だけだ。津軽での最初の撮影からおおよそ半世紀の間に起こった目まぐるしい時代の変化が、70年代に同地を目撃し、その姿をフィルムに収めた者として、浜にこの写真集を世に出すよう迫った。
高橋しげみ「津軽野に見る夢」(本書所収)
津軽野には、歌枕として囲い込まれることを拒むほどの痛切な自然の厳しさがあり、ふれると泣けてくるような温かい情感がある。浜昇は1970年代にその地に通い、近年再訪した。よき人とともにあった昔日の風景はよそよそしく、あるいは潰えた。取りもどすことのできない時の痛みを携え、写真家は記憶を代補する務めを全うする。再訪は時に苦い。だが、郷愁に真に味読される価値があるとすれば、痛苦が交じればこそ、なのである。
倉石信乃(詩人・批評家、明治大学教授)
腰の曲がった婆婆を見ることもなくなった21世紀半ばに、浜昇が写真にとどめた1970年代の津軽が浮上する。つかの間の〈地方〉。故郷を置き去りにしてしまった後ろめたさを抱えこみながら、今日も、ホーハイ、ホーハイ、聞こえる気がする。
山内明美(歴史社会学・社会思想史、宮城教育大学准教授)
