ストラポンタン(展覧会紹介など)

「戦争に思う。」─プロジェクト2025─ カーリン・リンド/セルヒー・ポポフ/柳健司

撮影:セルヒー・ポポフ
カーリン・リンド「Displaced Horizon(避難の地平線)」
セルヒー・ポポフ「無題」 ウクライナ・キーウ近郊の戦車のエンジンが砲弾によって火災し溶け出たアルミブロック
柳健司「Urakami Cathedral/outer wall(浦上天主堂 外壁)」 発光材入りのダイキャストガラス

 

2025年8月。
私たちは、1945年8月15日の終戦から80年を迎えます。多くの甚大な犠牲の上にある私たちの生活を思うとき、80年の歳月に導かれるように、多くの日本人が未経験の“戦争”をどのように人生に位置づけるのか、その道すがらを再確認すべき時間軸を思わないわけにはいきません。
Concept SpaceとAisでは、「戦争に思う。」をテーマに2023年から3つ展覧会の企画をすすめて参りました。
 
1つの企画は、デンマーク人アーティスト、カーリン・リンド氏による、逃亡と希望をテーマにした記念碑です。「Displaced Horizon(移送された地平線)」は、デンマークのユダヤ人の逃亡と救出から80周年を記念して、2023年10月にデンマークのギレレエに設置される記念碑的な作品です。ナチス・ドイツがデンマークを占領した際、多くのデンマーク系ユダヤ人が迫害され、追放されましたが、その多くが救出されました。この作品は、漁村に住む約1300人のユダヤ人がドイツのゲシュタポから身を隠し、夜間に海を渡ってスウェーデンへ逃れた場所、そして地元の人々の勇気によって他の人々の逃亡が可能になった場所を記念する彫刻作品です。この記念碑は82年前の状況を想起させると同時に、今もなお現実に存在するあるテーマに対する、より広い視点も表現しています。
 
1つの企画は、2022年2月のロシアによるウクライナの侵略戦争によって多くの犠牲が、世界規模でどのように影響をおよぼしたのか、また多くの芸術家たちがウクライナ国内に留まりながら、徴兵の恐怖と痛ましい戦死の現実に翻弄されている国民を、芸術というタイトに切り取った一つの現況が見え隠れする芸術や美術の意味と価値について、“戦争に思う”ことを体験するプロジェクトです。Concept SpaceとAisでは2019年6月に「ウクライナ芸術支援プロジェクト」において、多くの国民からの支援があり、ウクライナの美術家たちに支援金をおくることができました。そして、そのプロジェクトの窓口として、2019年の戦下のなかで8人の美術家の作品の輸送と戦時下の多くの写真を提供してくれた“SELHIY POPOV(セルヒー・ポポフ)”がいました。それから6年の時間の経過の中で、それでも制作の継続を実行した、彼の作品によって戦争について考える企画でもあります。
 
1つの企画は、我が国が、唯一の被爆国であることから発信する原爆問題の想起でもあります。2024年のノーベル賞受賞を果たす「日本被団協」の真摯な活動は、世界を動かしました。広島、長崎の原子力爆弾の有り様は、体験者の高齢によってか、過去の事象になることに、この受賞は大きな一石を投じたに違いありません。柳健司が示すガラスのダイキャスト(鋳造)作品は、漆黒の闇の中で危うく緑色に発光します。アトミック(原子力)をテーマに10年来継続制作された一連の蓄光ガラスの彫刻は、長崎の被爆地の「浦上天主堂」の被曝レンガから直接型取りされたものから制作されました。制作した柳氏自身「作品の形態とガラスの美しさには美術の最大の目的が託されているはずです。背後の託された型取りされた支持体はあくまで想いの先に見えてくるもの感じてくるものでなければなりません」。私たち鑑賞者が作品というある種の宝物の背後に想いを馳せ、感じられる“何か”とは。
 
この3つの「戦争に思う。」プロジェクトは、戦争を美術の視点から回顧すると同時に、美術が戦争に如何に影響し、また影響され美術がただ単なる自己実現と自己表現の延長線上から、違った意味での機能をどのように獲得したかについて考察するプロジェクトでもあります。
皆様のご理解とご支持をいただき、お誘い合わせの上ご高覧いただきますようお願い申し上げます。
 
「戦争に思う。」─プロジェクト2025─事務局

展覧会案内より転載

「戦争に思う。」─プロジェクト2025 “三つの視点”─について
 
Concept SpaceとAisでは、終戦から80年を迎える2025年8月に、「戦争に思う。」─プロジェクト2025 “三つの視点”─と題した3つの展覧会を開催する構想を進めています。本日は、その企画に込めた想いについてお話しさせていただきます。
 
美術において戦争をテーマとすることは、単に表現するだけでなく、慎重な考察を重ねる必要があります。それぞれの展覧会パンフレットには各アーティストの基本的なコンセプトを記していますが、まず私の立場についてお伝えしたいと思います。
 
私自身、戦争を直接体験したわけではありません。そのため、このテーマにどう向き合うべきか、自問自答を繰り返してきました。私の関心の出発点は、今回取り上げる3人の作家の作品を、同じく作家である自分の視点から見つめ直したいという思いでした。これは、キュレーターとしてではなく、ひとりのアーティストとして作品を捉えるという立ち位置からの試みです。
 
戦争というテーマは、どこを切り取るかによってその意味が大きく変わります。戦後生まれの私たち日本人は、日本の戦争体験の直接の当事者ではありません。ウクライナや、かつてのナチス・ドイツの敗戦についても同様です。では、私たちはどのようにこのテーマを美術の場で表現すべきでしょうか。その答えを探るために、この企画を立ち上げました。
 
特に日本の戦争については、どこまで踏み込むべきか慎重に考えなければなりません。例えば沖縄の歴史について、沖縄県外の人間がどこまで触れることができるのか。この問題を考える際、私は常に「私たちは実体験者ではない」という事実を忘れてはならないと思っています。辺野古の埋め立て問題のように、政治と深く結びついた事象もありますが、そこにどのようにアプローチすべきかは簡単ではありません。
 
そして、本展覧会は、広く関心を集めることを目的とはしていません。私自身が関心を持ち、掘り下げて考えたいテーマを軸にしています。美術に興味を持ちにくい人々にも、このテーマに触れる機会を提供できればと考えています。例えば、2022年に開催した「ウクライナ芸術支援プロジェクト」では、多くの方々がウクライナの芸術を通して、世界の時事問題と向き合う契機を得ました。その反応は、美術そのものへの興味以上に、時代の流れと密接に関わるものでした。
 
今回の展覧会では、デンマークのカーリン・リンドが制作した「石を割る」作品を紹介します。彼女の作品は、ドイツの彫刻家ウルリッヒ・リュックリームの「石を割る」彫刻とは異なる背景を持ちます。なぜ切り出した石ではなく、自然の砂岩でなければならなかったのか。その問いを考えることが、戦争というテーマにどのように結びつくのかを探求したいと思います。また、「ウクライナ芸術支援プロジェクト」に参加したセルヒー・ポポフの作品が持つ力、そして浦上天主堂をモデルにした柳健司の作品のメッセージも、重要な要素となります。これらの作品を通して、戦争の痛ましさ、そして私たちがそこから何を学ぶべきかを、皆さまとともに考えていきたいと思っています。
 
この展覧会を通じて、戦争の記憶を次の世代へと継承し、美術の力で新たな視点を提供することができれば幸いです。
 
「戦争に思う。」─プロジェクト2025─事務局
Concept Space/Ais 福田篤夫

展覧会案内より転載

 
「終戦80年特別企画その1」
「戦争に思う。」─プロジェクト2025─の“一つ目の視点”
Displaced Horizon(避難の地平線)
KARIN LIND(カーリン・リンド、デンマーク)

会期:2025年8月9日(土)〜8月30日(土)
開廊:金・土・日曜
時間:13:00~17:00
入場料:無料
要予約/メール(hukuda3323@yahoo.co.jp)にて前日までに予約
会場:CONCEPT SPACE
住所:群馬県渋川市石原309-8
電話:090-8582-0424
https://www.conceptspace.jp
 
 
「終戦80年特別企画その2」
「戦争に思う。」─プロジェクト2025─の“二つ目の視点”
Ukrainian art support project(ウクライナ芸術支援プロジェクト)
SERHIY POPOV(セルヒー・ポポフ、ウクライナ)

会期:2025年8月9日(土)〜8月30日(土)
開廊:金・土・日曜
時間:13:00~17:00
入場料:無料
要予約/メール(hukuda3323@yahoo.co.jp)にて前日までに予約
会場:CONCEPT SPACE/R2
住所:群馬県渋川市石原309-8
電話:090-8582-0424
※広くウクライナの芸術家の支援金の受付を申し受けます。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
https://www.conceptspace.jp
 
 
「終戦80年特別企画その3」
「戦争に思う。」─プロジェクト2025─の“三つ目の視点”
Urakami Cathedral/outer wall(浦上天主堂 外壁)
Yanagi Kenji(柳健司、日本)

会期:2025年8月9日(土)〜8月30日(土)
開廊:金・土・日曜
時間:13:00~18:00
入場料:無料
要予約/メール(hukuda3323@yahoo.co.jp)にて前日までに予約
会場:Ais Gallery
住所:群馬県渋川市渋川1763-12
電話:090-8582-0424
https://www.conceptspace.jp/ais-gallery
 
レクチュア
カーリン・リンド
日時:2025年8月9日(土)16:00〜16:30
会場:CONCEPT SPACE
料金:無料
 
オープニング
参加予定:カーリン・リンド、柳健司
日時:2025年8月9日(土)17:00〜18:00
会場:Ais Gallery
料金:無料
 
募金「ウクライナ芸術支援プロジェクト」(2019年からの継続)
2019年6月から「ウクライナ芸術支援プロジェクト」のチャリティ募金を継続。募金は各会場にて。
 
◇カーリン・リンド ウェブサイト
https://www.karinlind.dk
 
◇セルヒー・ポポフ ウェブサイト
https://www.serhiypopov.com
 
◇柳健司 ウェブサイト
https://www.yanagikenji.net
 

経路(CONCEPT SPACE)
JR上越線「渋川」駅を出て交番のある左側へ。ターミナルを回り込み「和食処とんでん」の方へ渡って通り過ぎそのまま駅と垂直方向に「市役所通り」を直進。次の交差点を通過し、その次の角(駐車場の角)を左折(右手に「セブン–イレブン」)、SLのある公園を右手に通り過ぎ「本沢医院」、四つ角を通過、そこから数えて右手2つ目の道を右折、左側2軒目。徒歩10分。
 
※CONCEPT SPACE〜Ais Gallery間は徒歩約5〜7分
 
経路(Ais Gallery)
JR上越線「渋川」駅を出て交番のある左側へ。ターミナルを回り込み「和食処とんでん」の方へ渡って通り過ぎそのまま駅と反対方向に「市役所通り」を直進。「夢庵」「ガスト」を通過し、保険会社のある「市役所正門入口」交差点を右折すぐ右。赤い階段奥。徒歩10分。

 

車椅子
建物の構造上入ることができません。(両会場)

 

SNS(Ais Gallery)
https://www.instagram.com/art.institut.shibukawa/

 
マップはCONCEPT SPACE(上)、Ais Gallery(下)