ストラポンタン(展覧会紹介など)

川辺ナホ『Flos Filicis:羊歯の花』

 

WAITINGROOM(東京)では、ドイツ・ハンブルクを拠点に活動する川辺ナホの個展『Flos Filicis:羊歯の花』を開催いたします。綿密なリサーチと多様な素材の組み合わせで知られる川辺はこれまで、映像やコラージュ、インスタレーションなどの手法を用いながら、炭鉱産業の歴史や移民といったテーマを扱ってきました。本展のタイトルである「羊歯」は、いわゆるシダ植物を指しています。石灰紀に生きたシダの植物遺体は化石燃料となって、近代から発達し続ける巨大なインフラを動かすエネルギーとなっています。この事実は、川辺によって詩的かつ演劇的に翻訳され、私たちの想像力へと訴えかけます。本展は、炭と電気資材を組み合わせた新作インスタレーション作品とフォトコラージュ作品2シリーズを中心に、炭を用いた平面作品や複数のドローイング作品で構成されます。
プレスリリースより編集・抜粋して転載

 

羊歯とカーネーション─Immigrés, donc travailleurs, 2026, lithograph on c-print, set of 9 (each 400 × 400 mm) ©Naho KAWABE, courtesy of the artist and WAITINGROOM

 

太古と未来、記録と記憶が絡み合うとき
 
今から約3億年前、世界は巨大な羊歯植物(=シダ植物)が繁茂する緑の時代を経験していました。それらの植物遺体は長い年月を経て石炭層へと凝縮し、やがて18〜19世紀の産業革命において、この天然資源は世界のインフラと経済、そして生活を構造から再編する巨大なエネルギーへと変換されました。現代においてもなお、太古の羊歯植物は絶えず燃焼され、そうして生成されたエネルギーは世界を巡り続けています。
 
胞子生殖をおこなう羊歯植物は花を咲かせることはなく、ゆえに「羊歯の花」というタイトルは本質的な逆説を孕んでいます。羊歯植物が花を咲かせる可能性、すなわち化石燃料の終わりなき消費によって理想郷へと到達する(不)可能性について川辺は、「無限のエネルギーによる労働からの解放、技術進歩による幸福なユートピアの出現。そのような豊かさの約束は羊歯の花のようなものだったのではないか。」と語ります。近代の進歩神話の起源となった羊歯植物と、現代のテクノロジー社会の基盤となった炭鉱産業。炭と電気資材を組み合わせた川辺の新作インスタレーションは、自然と技術が複雑に絡み合うこの様相を、空間として浮かび上がらせます。
 
一方で、川辺が長年関心を寄せてきた「移民」という視点は、炭鉱産業の長い歴史とそれを取り巻くグローバルな政治経済のダイナミズムを、個々の人間のささやかな日常生活と接続します。川辺は、炭鉱産業の移民労働者としてドイツに渡った日本人に関するリサーチを、2022年から継続的に行なってきました。このリサーチをもとに制作された新作のフォトコラージュには、当時の雑誌や新聞、そしてところどころに紛れ込んだ現代のカラー写真とともに、1960年代頃の日本人労働者の生活が物語性を帯びた架空の家族アルバムとして立ち現れます。この作品では石板印刷を用いて、羊歯植物とカーネーションという2つの植物を象徴的に織り交ぜることで、産業的な力学と労働者の生活を有機的につなぎ合わせます。カーネーションは、抵抗や労働運動のモチーフとされてきました。川辺はそれらをキメラ的に組み合わせることで、炭鉱労働という大きな歴史の枠組みの中から個々の生の姿を掬い上げつつ、再びその枠組みへと織り戻していきます。
 
川辺の制作過程で生み出される循環の中で、個人の経験と歴史は互いに映し合い、絶え間ない対話を繰り広げます。さまざまな素材やモチーフを横断しながら注意深く構築された川辺の作品は、エネルギーやテクノロジー、エコロジーの歴史と未来、そこに刻まれてきた労働と産業の痕跡を同時に立ち上げるのです。
 
プレスリリースより転載

 

Arabesque, 2020, charcoal, lacquer spray, glass, 396 × 296 mm ©Naho KAWABE, courtesy of the artist and WAITINGROOM

 

Japaner im Revier, 2024, inkjet print, set of 3 (each 420 × 297 mm) ©Naho KAWABE, courtesy of the artist and WAITINGROOM

 

作家・川辺ナホについて
 
1976年福岡県・福岡市生まれ。現在はドイツと日本を拠点に活動中。マテリアルの変換をテーマに、映像や写真、複数のオブジェを組み合わせたインスタレーション、ガラス板と炭の彫刻など、メディアを横断して作品を制作しているアーティストです。制作過程の中で、マテリアルの社会的コンテクストを重視し、丹念なリサーチを行うことが非常に重要なプロセスの一つとなっており、物質としての成り立ちや、歴史上の出来事、現代における問題といった社会的文脈を明らかにした上で、異なった位相の情報がいくつも付随するそのマテリアルを、作品を通して「変換」します。分解したり、繋ぎ合わせたり、別のモチーフを表したりといった「変換」を自らの手で行うことが、川辺の作品制作のベースにあり、それによって今この世の中で巻き起こっている目に見えない状況に形を与えることを、作品制作を通して試み続けています。
プレスリリースより編集・抜粋して転載
 
◇川辺ナホウェブサイト
http://www.nahokawabe.net

 

川辺ナホ『Flos Filicis:羊歯の花』
会期:2026年4月4日(土)〜5月3日(日・祝日)
休:月・火曜、祝 ※5月3日(日・祝)は開廊
時間:12:00〜19:00(日曜〜17:00)
会場:WAITINGROOM
住所:東京都文京区水道2-14-2 長島ビル1F
電話:03-6304-1877
https://waitingroom.jp

 

経路(江戸川橋
  • 東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅・4出口を出ると高速道路の見える大通り。右に進む
  • 信号、歩道橋のある交差点を通過
  • 次の交差点「石切橋」を左折して高速道路をくぐり、川に掛かる「石切橋」を渡る
  • 左への道の角を通過して直進
  • カーブを過ぎると左側に赤い郵便ポスト。同じ敷地内のビルの1階。徒歩3分。
経路(神楽坂
  • 東京メトロ東西線「神楽坂」駅・1b出口を出ると目の前に「小諸そば」。左折する
  • 「赤城神社」の朱色の鳥居に突き当たったら左折
  • 「ローソン」の角を右折(「赤城坂」に入る)
  • 「加賀屋」を左に見て道なりに曲がったらすぐに右折
  • その後しばらく直進
  • 「水道町」交差点を通過
  • 前方に高速道路が見えている
  • 大通り(左角に「ローソン」のある「石切橋」交差点)に出たら直進して横断歩道を渡る
  • 高速道路をくぐり、川に掛かる「石切橋」を渡る
  • 左への道の角を通過して直進
  • カーブを過ぎると左側に赤い郵便ポスト。同じ敷地内のビルの1階。徒歩10分。

 

車椅子

ギャラリー入口には特に段差なく、扉は両開き(開き戸)。ギャラリー内メインスペースは基本的に平坦。会場奥のバックヤード入口は横幅67cmと少々狭い。