
時折、故郷の房総半島へ写真を撮りに行く。
普段、私は東京で生活している。働いて、写真を現像して、夢をかじり、街をふらつき、少々の文化に触れ、なんとなく、なんとか、回っていく日常。時にはそれを過ぎゆく物語に飛躍させ、夢想することもある。それでも日常に追いつかれてしまった時、そこから逸脱するように房総へ向かう。
ここにはない何かを求め、房総を廻る旅を繰り返してきた。しかし、規則性を伴った旅はいまや定期的な参拝に近く、結局は日常に取り込まれてしまったように感じる。それでも時折、そうした光景の連続から無常を見出すことに成功する。その時ファインダー越しの光景は、見慣れた場所であるのにもかかわらず遠い辺境のように見え、まるで写真になることを予期しているようなさみしさを私に感じさせる。
移りゆく情景を見つめる精度を上げていく。それに何の意味があるのかわからないまま写真が積み重なり、日常は日々として積み重なる。価値観が揺らぐ世相の中で、日々のことに小さな寄る辺を想う。そこに自由を見出せる限り、“そこ一里” のように房総への旅は終着しない。
* 房総でその土地の人に道のりを尋ねると「すぐそこ、あと一里だ」と答えるが、いくら行けども同じ問答が繰り返され、なかなか到着しないこと。田舎ならではのおおらかな距離感覚を表す言葉。かつて浮世絵師の歌川広重は房総を旅し、「菜の花や 今日も上総のそこ一里」と詠み、また夏目漱石は小説『こころ』で、「我々は暑い日に射られながら、苦しい思いをして、上総のそこ一里に騙されながら、うんうん歩きました」と綴っている。
(嶋田篤人)


金柑画廊は、9月19日(土)から10月12日(月・祝)まで、嶋田篤人写真展「そこ一里 #03」を開催いたします。
嶋田篤人は、フィルムで撮影し、自身で現像・暗室作業を経て、ゼラチンシルバープリントの作品を制作するという、かつて写真作品制作の定石であった手法を一貫して続けています。「そこ一里」は、2019年から継続して制作されている、房総半島で撮影されたシリーズです。本展「そこ一里 #03」では、新作17点を展示いたします。
繰り返し足を運び撮影し、暗室での作業を繰り返す。そうした行為の集積が作品となって作家自身にも新たな気づきをもたらし、その気づきに呼応するようにまた足を運ぶ。土地や自身の微細な変化、気候や感情、日常で過ぎてしまう瑣末なことも作品へと昇華していきます。「そこ一里」のタイトルのように、これからも想像するよりも長くゆったりとした道のりが眼前に広がっているのだと思います。この機会にご高覧ください。
(太田京子/金柑画廊)
嶋田篤人 Atsuto Shimada
1989年千葉県生まれ。2011年より房総半島を撮影地として、自らフィルムを現像し、暗室でゼラチンシルバープリントによる作品を制作。2019年に「そこ一里」シリーズの制作を開始し、2020年より継続して発表している。
提供情報を編集、抜粋して転載
◇Instagram
https://www.instagram.com/at_shimada
嶋田篤人写真展「そこ一里 #03」
会期:2026年9月19日(土)〜10月12日(月・祝)
開場:木・金・土・日曜、祝
時間:12:00〜19:00
会場:金柑画廊
住所:東京都目黒区目黒4-26-7
電話:03-5722-9061
https://kinkangallery.com
- JR山手線・東京メトロ南北線・都営三田線「目黒」駅・西口を出て、高層ビルとパチンコ屋の間の「目黒通り」を下り「権之助坂」を進む
- しばらくしてあらわれる「目黒川」を渡る
- 「大鳥神社」交差点を直進。しばらく歩く
- 途中、進行方向右側に渡っておく
- 歩道橋を通過
- 「元競馬場」交差点を通過
- 肉まんの店、そば屋を過ぎ「油面」交差点の「交番」の角を右折して右側すぐ。徒歩18分。
- 「目黒」駅・西口から東急バス(野沢龍雲寺行以外で)に乗り「元競馬場」下車
- そのままバスの進行方向へ進み「元競馬場」交差点を通過
- 次の「油面」交差点を右折
- 右手に交番を見て「油面地蔵通り」へ入り右側すぐ。徒歩3分。
- バスを「目黒消防署」で下車した場合は、バスの進行方向とは逆に戻って「ニトリ」を通過
- 「目黒消防署」を通過
- 「油面」交差点を左折して「油面地蔵通り」へ入り右側すぐ。徒歩3分。
- 東急東横線「祐天寺」駅・中央改札から「東口1」出口へ
- 駅を背にしてまっすぐに伸びる道(右角に「ファミリーマート」。道の上方に途切れたアーチ状に「YUTENJI STREET」の文字)を進む
- 「まいばすけっと」を通過
- 信号のある交差点「目黒税務署前」を通過し直進
- 「目黒税務署」を通過
- 突き当たりを左折。道なりにしばらく進む
- 五叉路の交差点「祐天寺裏」では、まっすぐよりやや右へ伸びる道(右角には3階建ての階段が目立つ小振りなマンション、左角には古い交番のようなたたずまいの「谷戸前地域安全センター」)を選ぶ
- すぐ左手に薬局あり
- しばらく進むと突き当たり。左折
- すぐ次の角を右折(上方に「油面地蔵通り」の看板あり)。道なりに進む
- 「セブン–イレブン」を通過
- 「カクヤス」を通過
- 大通り(目黒通り)の手前左側、「おじま歯科」の斜め向かい。徒歩17分。
入口に段差あり。車椅子単独の場合は画廊の方のお手伝い可能。
