
©Saori MIYAKE, courtesy of the artist and WAITINGROOM

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影と色が重なり合う場所
バウハウスで教鞭を取り、色彩と形態の関係について研究を重ねた美術家・教育者のジョセフ・アルバースは、色が相対的に知覚されることを明らかにしました。色が私たちの精神世界において生み出されるならば、三宅の言う「絵画的な像」のように、色もまた、多声性と相互性を孕みながら人と人との間で共有され、循環すると考えられます。
映像作品とサイアノタイプによって構成される本展において、三宅はこれまでのモノクロやブルーの世界に、意図的に「色」を挿入します。ネガポジを反転させるこれまでの手法に調色の要素を加えた新作映像作品では、特定の場所を想起させるシーンと、ここではないどこかを想像させるシーンが混ざり合うように映し出されます。この「どこかにあるが、どこかはわからない」風景は、特定の対象と特定の色との結びつきを一旦切り離し、色を別の回路へと結び直すことで、より豊かな物語性を帯びていきます。光と影が反転し、影であるはずの部分にも色が施されたこの映像は、影に色を見るという経験を通して、情報を俯瞰的に捉えるのではなく、むしろ目を閉じて人間の精神世界へと立ち帰ることを促すようです。
一方、太陽光で印画し鉄塩の化学反応によって青く発色するサイアノタイプは、植物学者のアンナ・アトキンスによって、植物標本の影を写し取る当時最先端の技術として活用されました。その原初的な手法を辿るように、三宅の新作サイアノタイプでも、実際の植物の影が写し取られています。植物の影に組み合わされるのは、複数のデジタル画像を拡大し、そこに現れるグリッドを重ねた抽象的なイメージです。極端に拡大されたイメージは、通常ひとつの像として見ているデジタル画像の構造を露わにすると同時に、そのなかに有機的な風景を立ち現れさせます。そして、自然物としての植物とテクノロジーがもたらす拡張された視点が共存する青の世界に、三宅は手彩色を施します。対象を記録するテクノロジーとしての写真に、手彩色という絵画的なアプローチを重ねるこの手法は、人間がテクノロジーやシステムにいかに応答し、両者がどのように相互に変容していくのかを可視化する試みといえます。
本展において三宅が描こうと試みるのは、テクノロジーの発達が一層加速する現代において、私たち人間が獲得し始めている新しい「像」です。それは SF的な欲望を伴う理想世界ではなく、必然性を孕んだリアリティといえるでしょう。このように三宅は、可視と不可視の領域を並置して扱いながら、それらを観察し、描写し続けているのです。
プレスリリースより転載

©Saori MIYAKE, courtesy of the artist and WAITINGROOM
当ギャラリーでの三宅の個展は、約3年ぶりとなります。三宅は、物体の影を写し取るフォトグラムや日光で感光させるサイアノタイプ、それらの写真技法をタイムベースドメディアへと拡張した映像作品など、多様な素材や技法を横断しながら、イメージが共有される過程で抽出される「絵画的な像」に関心を寄せてきました。2023年に WAITINGROOM で開催された個展『Nowhere in Blue』では、サイアノタイプの手法を用いて「どこでもない(ように見える)」風景を生み出しました。そして、昨年 ARTRO(京都)で開催された個展『影色』では、条件によって相対的に知覚される影と色に共通性を見出し、色について探求するサイアノタイプと映像作品を発表しました。これら2つの個展での試みを引き継ぎながら、さらなる展開を見せる本展では、ネガポジ反転と調色の手法を用いた新作映像作品と、新作のサイアノタイプ作品を発表します。サイアノタイプでは、デジタルイメージを拡大することで現れるグリッドに実際の植物の影を重ね、さらに手彩色を施しています。ユニークな手法で「見る」行為の心象性を浮かび上がらせてきた三宅が描き出す、影と色の新たな関係性を、ぜひこの機会にご高覧ください。
プレスリリースより抜粋して転載

©Saori MIYAKE, courtesy of the artist

©Saori MIYAKE, courtesy of the artist
三宅砂織
1975年岐阜県生まれ。現在京都を拠点に活動中。
三宅はこれまで、さまざまな経緯で出会った既存の画像をネガポジ反転させて透明シートに描き、それを感光紙の上に重ねて露光することで、ドローイングの「影」を印画するフォトグラムの手法に取り組んできました。カメラによって一度対象化された世界に目を向けることから導き出されるイメージは、物語性や断片性、多層性を詩的に浮かび上がらせ、膨大な量のイメージが氾濫する現代において、「見るという行為」を身体的な行為だけでなく、心理的な現象としてもとらえられると作家は考察しています。近年では、フォトグラムの制作を通して深めた思考を反映した映像作品や、日光で感光させるサイアノタイプにも取り組みながら、人間がさまざまなものに眼差しを向け、それを画像化し、共有された画像にさらに新たな眼差しが重なっていく営みの中から、「絵画的な像」を抽出する試みを続けています。
プレスリリースより抜粋・編集して転載
◇ウェブサイト
https://www.saorimiyake.com
◇Instagram
https://www.instagram.com/miyake_saori/
三宅砂織『影色 2』
会期:2026年9月12日(土)〜10月11日(日)
休:月・火曜、祝
時間:12:00〜19:00(日曜〜17:00)
※オープニングレセプション:9月12日(土)18:00〜20:00(作家在廊)
会場:WAITINGROOM
住所:東京都文京区水道2-14-2 長島ビル1F
電話:03-6304-1877
https://waitingroom.jp
- 東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅・4出口を出ると高速道路の見える大通り。右に進む
- 信号、歩道橋のある交差点を通過
- 次の交差点「石切橋」を左折して高速道路をくぐり、川に掛かる「石切橋」を渡る
- 左への道の角を通過して直進
- カーブを過ぎると左側に赤い郵便ポスト。同じ敷地内のビルの1階。徒歩3分。
- 東京メトロ東西線「神楽坂」駅・1b出口を出ると目の前に「小諸そば」。左折する
- 「赤城神社」の朱色の鳥居に突き当たったら左折
- 「ローソン」の角を右折(「赤城坂」に入る)
- 「加賀屋」を左に見て道なりに曲がったらすぐに右折
- その後しばらく直進
- 「水道町」交差点を通過
- 前方に高速道路が見えている
- 大通り(左角に「ローソン」のある「石切橋」交差点)に出たら直進して横断歩道を渡る
- 高速道路をくぐり、川に掛かる「石切橋」を渡る
- 左への道の角を通過して直進
- カーブを過ぎると左側に赤い郵便ポスト。同じ敷地内のビルの1階。徒歩10分。
ギャラリー入口には特に段差なく、扉は両開き(開き戸)。ギャラリー内メインスペースは基本的に平坦。会場奥のバックヤード入口は横幅67cmと少々狭い。
