ストラポンタン(展覧会紹介など)

北島敬三写真展 借りた場所、借りた時間

TOKYO 1979 Courtesy of the artist ⒸKEIZO KITAJIMA
East Berlin 1989 Courtesy of the artist ⒸKEIZO KITAJIMA
ウラジオストク1991年6月3日 Courtesy of the artist ⒸKEIZO KITAJIMA
シリーズ〈PORTRAITS〉より Courtesy of the artist ⒸKEIZO KITAJIMA
長野県 須坂市 2018年1月9日 Courtesy of the artist ⒸKEIZO KITAJIMA
北海道 白老町 2018年2月10日 Courtesy of the artist ⒸKEIZO KITAJIMA

 

本展では国内外で高い評価を受ける北島敬三の、キャリア初期のスナップショットから近年の連作まで幅広く展示し、これまでの仕事を振り返ります。
 
長野県須坂市に生まれた北島は、1975年に東松照明、荒木経惟、深瀬昌久、細江英公、森山大道、横須賀功光らが講師を務めた「WORKSHOP写真学校」への参加をきっかけに本格的に写真を始めました。翌年に同校が解散すると、森山らと自主運営ギャラリー「イメージショップCAMP」を立ち上げ、初個展「BCストリート・オキナワ」(新宿ニコンサロン、1976年)や、月1回の連続写真展として12回にわたって開催された「写真特急便 東京」(イメージショップCAMP、1979年)、東京とコザ(現・沖縄市)を往復しながら隔月で開催された「写真特急便 沖縄」(同、1980年)などで精力的に作品を発表し、仮借なく被写体を捉えるそのスナップショットは森山をして「白昼の通り魔」1 と言わしめた一方で、『カメラ毎日』の編集長を務めた西井一夫からは「ストロボ一発」を多用するスタイルを批判されます 2。賛否を巻き起こしながらも、「写真特急便 東京」で日本写真協会新人賞を受賞(1981年)し、その賞金で滞在したニューヨークのストリートスナップをまとめた写真集『New York』(白夜書房)で第8回木村伊兵衛写真賞を受賞します。
 
その後も、冷戦構造の歪みが際立つ東西ベルリン、ワルシャワ、プラハ、ブダペスト、香港、ソウルといった都市を巡り、遭遇する人々の形姿を捉えた鮮烈なストリートスナップによって若くして評価を確立しました。しかし崩壊直前の旧ソビエト社会主義共和国連邦を取材した1991年 3 を前後して、変化を追い立てる時代の潮流に呼応するかのように、突如、それまでのスナップショットを放棄。以降、試行錯誤を重ねるなかで、無徴の人々を定点観測的に撮影する〈PORTRAITS〉や、東日本大震災の被災地域を含む、日本各地のマージナルな風景を記録し続ける〈UNTITLEDRECORDS〉といった、近年のシリーズに連なるソリッドかつ思惟的な作風へと転向を果たします。
 
被写体や撮影スタイルの劇的な変遷を辿った北島は、同時に自身の仕事を読み返し、作品を再構成するという作業を繰り返してきました。本展では、北島のキャリアの中で2度、象徴的に現れるフレーズ「借りた場所、借りた時間」を手がかりに、写真家自身の手によるニュープリントや、重要な作品発表の場として機能した雑誌や写真集などの資料を通じて、その50年にわたる仕事の読み返しを試みます。
 
プレスリリースより一部編集・抜粋して転載

  1. 森山大道「白昼の通り魔北島敬三」、北島敬三『写真特急便[東京]』パロル舎、1980年。 ↩︎
  2. 無署名「ストロボ一発に問題」『カメラ毎日』1976年9月号、40頁。なお、後に北島の理解者となった西井は、雑誌や自身が企画する写真展等で北島を取り上げている。 ↩︎
  3. ソ連での取材から16年を経て、現地で撮影された一連の写真を再構成した写真展「北島敬三「USSR1991」」(銀座ニコンサロン、2007年)で第32回伊奈信男賞受賞。 ↩︎

 

200点以上の旧作のニュープリントを作成。初期のスナップショットから近年の連作までを網羅する。

 

展示構成(実際の展示順ではなく時系列順)
 
 
PHOTO EXPRESS TOKYO 1979
北島は1979年の1年間にわたってイメージショップCAMPで月1回の連続写真展「写真特急便 東京」を開催。撮影と発表までの期間を極限まで圧縮した同展では、ハイコントラストな荒々しいプリントや、インプロヴィゼーション的にギャラリーの壁面いっぱいに引き伸ばされたプリントが提示され、総じて高い熱量に裏打ちされた実験的な展示が展開された。
 
PHOTO EXPRESS KOZA 1975–
1975年に初めて沖縄を訪れた北島は、米軍基地に隣接する歓楽街として栄えたコザでの滞在を契機として本格的に写真の撮影を始め、嘉手納基地と市街地を結ぶ通りの名称を冠した初個展「B・Cストリート」(1976年)で実質的なデビューを果たす。しかしコザの写真に対して呈された一部の厳しい批判は、本土出身者として沖縄で撮影をする北島の自信を大きく揺るがせるものとなった。
 
NEW YORK
「写真特急便 東京」で日本写真協会新人賞を受賞した北島はその賞金で1981年の夏に渡米。ときに剥き出しの暴力と隣り合わせになりながらも、約9カ月のあいだに900本分のフィルムに相当する撮影を行う。カオティックな多文化の混淆の中で色濃く「生」が析出する一連のアンダーグラウンドな写真は、写真集『New York』(白夜書房)としてまとめられ、同作で第8回木村伊兵衛写真賞を受賞。
 
EASTERN EUROPE
写真集『New York』で木村伊兵衛写真賞を受賞した北島は、ニューヨーク滞在中から構想していた東欧での撮影を実行に移すため1983年に渡欧。西ベルリンを拠点に翌年まで東ベルリン、ウィーン、プラハ、ワルシャワ、ブダペスト、ベオグラード、ブカレストをはじめとする欧州各地を訪れた。路上で遭遇する人々の形姿を捉えたスナップショットはどこか重々しく、冷戦構造の歪みを写し出しているようである。
 
USSR 1991
1990年11月から翌年11月にかけての約150日間におよぶ『アサヒグラフ』の取材で連邦を構成する15の共和国を断続的に訪れた北島は、期せずして世界初の社会主義国の崩壊の過程を記録することとなる。1991年当時、すでにスナップショットの方法論から離れつつあった北島だが、あらゆる制約を排して撮影された〈USSR 1991〉は記録性と視覚性を兼ね備えた、スナップショット期の北島の集大成的連作となった。
 
A.D.1991
デビュー以来、北島が被写体を求めて渉猟した、コザやニューヨーク、東西ベルリンといった地は、翻せば東西冷戦の歪みを最も体現する空間でもあった。しかし東側陣営の盟主・ソ連の崩壊と奇しくも刊行の時期を同じくした写真集『A.D.1991』(河出書房新社)は、それまでのスナップショットに、90年前後から北島が新たに取り組み始めた香港、ニューヨーク、東京といった都市の風景が加えられた異色の写真集となった。本作以降、北島は急速にスナップショットの方法論から遠ざかっていくこととなる。
 
PORTRAITS
白い背景に白い着衣の正面像。類型化された〈PORTRAITS〉の連作は、1992年に最初の撮影が行われて以来、複数年にわたって(当初は1年に1枚ずつのペースで)同じ人物の肖像を撮影するプロジェクトとして企図された。無徴の人々の「肖像」によって肖像を解体し再構築する試みの中で、現在、2000点を超える肖像のアーカイヴが構築されている。
 
UNTITLED RECORDS
『A.D.1991』の時点ですでに大判カメラによる国内外の都市風景に取り組んでいた北島だが、その関心は徐々に北海道から沖縄までの、国内のマージナルな風景へと移っていく。2000年代前半から〈PLACES〉として撮影が続けられた「匿名」の風景のシリーズは、2011年に発生した東日本大震災が契機となって〈UNTITLED RECORDS〉に改められ、以降、被災地域と被災地域以外の風景を分け隔てることなく等価なものとして記録する試みが現在まで続けられている。
 
プレスリリースより転載

 

北島敬三
1954年長野県須坂市生まれ。大学を中退した1975年に「WORKSHOP写真学校」森山大道教室に参加。同校解散後、新宿二丁目に森山らと自主運営ギャラリー「イメージショップCAMP」を立ち上げる。70年代後半からコザ、東京、ニューヨーク、東西ベルリン、プラハ、ブダペスト、ソウル、旧ソ連などで撮影したスナップショットを発表するも、1991年に刊行された写真集『A.D.1991』を境に「風景」と「肖像」の連作へと大きく制作のスタイルを転換させる。写真家として中上健次や島田雅彦らと協働するほか、2001年以降は岸幸太や笹岡啓子らと「photographers’ gallery」の運営に携わる。
プレスリリースより一部編集して転載

 

北島敬三写真展 借りた場所、借りた時間
会期:2025年11月29日(土)〜2026年1月18日(日)
休:毎週水曜、年末年始(12月28日〜1月3日)
時間:9:00〜17:00(展示室入場は16:30まで)
会場:長野県立美術館 展示室1・2・3
住所:長野県長野市箱清水1-4-4(城山公園内・善光寺東隣)
電話:026-232-0052
観覧料:一般1,000円、大学生及び75歳以上800円、高校生以下又は18歳未満無料
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
※長野県内の大学等に通う学生は無料
詳細は美術館ホームページ参照
https://nagano.art.museum
 
ギャラリートーク
北島敬三×松井正(長野県立美術館学芸員)
日時:11月29日(土)14:00〜
場所:長野県立美術館 展示室1・2・3
 
関連トークイベント1
岸幸太(写真家)×高橋しげみ(青森県立美術館学芸員)×松井正
日時:11月29日(土)15:00〜
場所:長野県立美術館 本館B1Fホール
 
関連トークイベント2
篠田優(写真家)×松井正
日時:12月6日(土)13:30〜
場所:長野県立美術館 本館B1Fホール
 
映画「カメラになった男──写真家中平卓馬」スクリーニング&トーク
小原真史(監督・東京工芸大学准教授)×北島敬三×松井正
日時:12月6日(土)18:30〜
場所:長野相生座・ロキシー長野県長野市権堂町2255
 
関連トークイベント3
笹岡啓子(写真家)×倉石信乃(明治大学教授)×松井正
日時:12月7日(日)13:30〜
場所:長野県立美術館 本館B1Fホール
 
関連トークイベント4
北島敬三×倉石信乃×高橋しげみ×松井正
日時:2026年1月11日(日)13:30〜
場所:長野県立美術館 本館B1Fホール
 
※いずれのイベントも参加費無料(ただしギャラリートークにご参加の方は要観覧券)、事前申込不要。
 
北島敬三写真展 借りた場所、借りた時間 関連展示
岸幸太「彼の地、飛地」/笹岡啓子「TheWorldAfter」「ParkCity」/篠田優「Voice(s)」
会期:2025年11月29日(土)〜2026年1月18日(日)
会場:長野県立美術館 本館1F交流スペース・オープンギャラリー
観覧料:無料

 

経路
◆JR「長野」駅・善光寺口に出る▶▶1番バス乗り場から、アルピコ交通バス11系統善光寺経由「宇木」行、16系統善光寺・若槻団地経由「若槻東条」行、17系統善光寺・西条経由「若槻東条」行のいずれかに乗車し「善光寺北」下車▶▶バスの進行方向に直進▶▶「城山公園西」交差点を前方に渡ってから右折(長野県立美術館の案内板あり)▶▶斜め左に見えているのが美術館。徒歩約3分。
◆JR「長野」駅・善光寺口に出る▶▶1番バス乗り場から、「善光寺」行き「びんずる号」で「善光寺大門」下車▶▶バスの進行方向に直進▶▶「善光寺」交差点を直進して参道へ入る▶▶「仁王門」を通過▶▶店の連なる「仲見世通り通り」に入り直進▶▶山門を通過▶▶本堂に突き当たったら本堂の右の方へ回り込む▶▶本堂を左に見て右折▶▶御札、御守の授与所を左に見て直進する▶▶甘味処を通過して道路に出る▶▶前方「城山公園入口」交差点の左斜め向こうに見えているのが美術館。徒歩約10分。なお、土・日曜、祝日は、同じバスで「城山公園前」で下車。すぐ左側が美術館。
◆長野電鉄「善光寺下」駅・4番出口から地上に出る▶▶すぐに右折し「セブン–イレブン」を通過▶▶交差点を通過▶▶歩道右側にある短い横断歩道の角を右折▶▶すぐに左折して住宅の間の蛇行する道を道なりに進む▶▶細い階段の道を進む▶▶階段を上り切ったら振り返るように右折して道なりに進む▶▶右手に「城山公民館」を過ぎて広い道に出たら、前方に横断歩道を渡って左折▶▶右側に見えているのが美術館。徒歩約15分。
◆美術館には一般来館者のための駐車場はなし(信州パーキング・パーミット制度による専用駐車場はあり)。近隣の有料駐車場を利用。城山公園駐車場を利用の場合は観覧券提示により駐車料金の割引あり。

 

車椅子
屋外から館内へはスロープ。全階に多機能トイレあり。館のウェブサイト内に「バリアフリー・設備紹介」のページあり。

 

SNS
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