

岩名泰岳(いわなやすたけ)は1987年三重県生まれ。
岩名は2013年に結成された島ヶ原村民芸術「蜜ノ木」の初代代表を務め、都会の発想から生まれたアートを地方に移植するいわゆる「アートによる地域興し」的なものとは一線を画し、衰退していく集落に残って地元の歴史や風土、文化に深く根ざしながら、それぞれの分野で現実と戦っていく若者たちの創造的な行為自体をアートとして発信してきました。こうした「蜜ノ木」の活動は近年、アートコレクティブやローカリズムの事例として特に注目されていますが、そのなかで生み出される岩名の作品は、故郷の自然や村の信仰をモチーフとし、多くの場合具象的な題材から出発してはいるものの、その抽象度は高くとても洗練されたものとなっています。
タグチファインアートで5回目の個展となる本展は、2年前の個展の以降に描き溜めた作品のなかから、石仏をモチーフとした作品と、戦争報道で目にする機会が増えた硝煙やキノコ雲と身近なキノコやカビといった菌類とを重ね合わせた作品を中心に展示いたします。
(プレスリリースから抜粋)
1.ふたつの神がかり
1892年(明治25年)、京都丹波で紙屑拾いをしていた出口なおは、ある日“神がかり”を起こした。文盲だったというなおは“お筆先”と呼ばれる自動筆記によって膨大な神の言葉を綴った。
「今日は獣類の世、強いもの勝ちの、悪魔ばかりの世」
急速な近代化に取り残されながらも生き延びてきた田舎の老婆は当時流行していたインフルエンサー(新宗教の教祖)の仲間入りを果たした。
1929年(昭和4年)、新潟佐渡に生まれた北輝次郎は妻すず子と法華経を唱えるようになった。すず子もまた“神がかり”を起こした。
輝次郎は妻を通して告げられる神霊の言葉や夢の景色を熱心に日記に綴った。
この頃、日本は震災を経てからの恐慌によって困窮を極め、農村では娘たちの身売りが相次いだ。“世直し”を唱えた輝次郎はインフルエンサー(社会運動家)のひとりとなった。
彼に心酔した一部の青年たちが選んだのは政治家や財界人を襲撃するという方法だった。
2.芥
2019年、新型コロナウイルスによる感染症が世界中に広がった。
人々はウイルスと社会の監視から身を守るためにマスクを着けるようになり、その顔がより見えなくなった。
ニュースでは日々の感染者がカウントされ、田舎ではだれが感染したのか、他所者を見つけた、という噂や疑心が静かに錯綜を繰り返した。
わたしはほとんどの時間を故郷の村で過ごし、いつもより人気のない集落を歩いて数十枚の絵を描いた。それから、その一枚に「けものたちのくに」と名付けた。
2024年、世界は長年追い求めてきた理想に反して既存の体制への不満とインフルエンサーたちがばら撒く無数の情報によって混迷を深め、あらゆる土地で緊張が高まった。
わたしは村はずれの肥料工場(産廃処理施設)でごみ拾いの職を得た。
毎日、都会からやってくる大量の食品ごみを有機肥料に作り変える工場だった。わたしは土埃で覆われた壁に絵を描きはじめた。日が暮れると、汚れたままの姿でアトリエに帰り、また絵を描くことをつづけた。
2025年 寒波の後、春の兆し岩名泰岳
プレスリリースより
岩名泰岳「けものたちのくに」
会期:2025年3月22日(土)〜4月26日(土)
休:日・月曜、祝
時間:13:00〜19:00
会場:タグチファインアート
住所:東京都中央区日本橋本町2-6-13山三ビルB1F
電話:03-5652-3660
http://www.taguchifineart.com
経路
◆東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越前」駅・A4出口とA6出口(それぞれ地下の)の間にある「タロー書店」右脇の通路を進み「コレド室町2」に入る。エスカレーターを左に見て奥へ。突き当たりの階段、エスカレーター、エレベーターで地上に出る。向かいの「レストラン桂」(階段、エスカレーターの場合)を正面に見て左へ進む(桜の木が植っている道)。郵便ポストを通過。高速道路の下をくぐり横断歩道を渡る(昭和通り)。左角にある建物を左に見て「第一歯科」の先にある、ビル入口脇の専用入口から入る。徒歩4分。
◆東京メトロ日比谷線「小伝馬町」駅・3番出口を出て左へ進む。「成城石井」を通過、「十思スクエア前」交差点を左折。突き当たりを右折し、すぐ左折。次の横断歩道のところを右折。高速道路のある大通りの手前右側のビル、右手の専用入口から入る。徒歩5分。
◆JR総武線快速「新日本橋」駅・5番出口(右側の方)を出て進行方向に進む。「DAIHATSU」を通過。「maruetsupetit」のある「本町二丁目」交差点で手前の横断歩道を左折して渡る。左角にある建物を左に見て「第一歯科」の先にある、ビル入口脇の専用入口から入る。徒歩4分。
◆東京メトロ日比谷線・都営地下鉄浅草線「人形町」駅・A5出口を出て左へ。角に「ダイソー」のある「人形町」交差点を左折。次の交差点を通過。その次の「堀留町」交差点を左折。道路の右側を行く。しばらく直進。高速道路のある大通りの手前右側のビル、右手の専用入口から入る。徒歩7分。
車椅子
建物正面入口(段差あり)からエレベーターあり。地階の搬入口経由で会場へ。お声がけを。
SNS
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